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【第4話】エリア51探検記(3-1)|ヒカルランドClub (ヒカルランドクラブ)


【第4話】エリア51探検記(3-1)

編集部註

当連載は保江邦夫氏が過去に『バウンダリー』という雑誌にペンネームで連載していた原稿をまとめたものです。ペンネームに関わる部分など、一部改稿致しました。

8.アラモで聞いた秘密

ラスベガスから東北に向かうフリーウェイ15号線の両側には、NELIS(ネリス)空軍基地が広がり、エプロンに戦闘機や攻撃機が並んでいるのが車の窓から手に取るようでした。

これなら、何も山の中にある施設だからといって、格別に侵入者を追い払ったりするまでもないのにと、3人とも訝しげに基地の様子を眺めながら車をフリーウェイの流れに委ねたのです。

地図を見ていたスコットの指示で、私はウインカーを出してフリーウェイから降り、今度は真っ直ぐに北に延びるハイウェイ93号線に乗り換えました。

夕日が左に連なる山々のシルエットをどす黒く印象づける中、私達は砂漠の中を延々と続くガラ空きの田舎道を猛スピードで突き進み、

何とか夕明かりが消える前にアラモの村にたどり着くことができたのです。

炎天下を水なしで4時間近く山歩きした疲れは既に癒され、むしろ死ぬほどの空腹を感じていた私達は、すぐにでもどこか食事のできる店に入りたかったのですが、

村とすら呼ぶことに抵抗感のあるアラモの閑散とした佇まいを見た途端、まずは泊まる所を確保するのが先決だと思いました。

ちょうど2人連れの少年が歩いていたので、この村にモーテルがあるかどうか聞いてみたところ、ハイウェイの向こうとこちらに1軒ずつあるとのこと。

「ハイウェイ?」

そんなものが一体どこにあるんだ、とばかりの訝しげな私達の顔を見た少年は、

さっきまで延々と走り続けてきた田舎道を指差したのです。

「オーケイ、サンクス」

納得した私達は、再び他に車も通っていない”ハイウェイ”へと、戻っていくことにしました。

 

1軒目のモーテルは広い駐車場にトラックばかりが止めてあり、明らかに常連のトラッカーのための宿という雰囲気でした。

ますますくじけそうになった私達が、最後の望みを託して村はずれに差し掛かったとき、

警察やマフィアから追われる羽目になった主人公が身を隠す映画のシーンに必ず出てくるような、田舎の古いモーテルが見えたのです。

ブロックを積み上げただけのL字型の平屋のモーテルの前には全く車がなく、客は1人としていないようでした。

「ノー、アザー、オプション!」

そう叫んだスコットは、私とマリアンヌを追い立てるように事務所らしき部屋に入っていきました。

中には小さなカウンターがあるだけで、スコットは何度も奧に向かって人を呼び続けたのですが、全く反応なし。

3人互いに顔を見合わせて、もうここに泊まるしかないという信念の表情を再確認したそのとき、

背後の入り口が不意に開いたかと思うと、小太りの年寄りが無言で入ってきて、そのまま奧に入っていこうとしたのです。

 

「ヘイ、イクスキューズアス!」

スコットは慌てて年寄りの背中に声を掛けました。

無表情で振り返った男は、黙ったまま私達を眺めていましたが、

スコットの「部屋はあるかい?」という言葉に、やっと重い口を開いたのです。

「今夜は空いてはいるが、幾ついるんだ?」

これで、とにかく休むことができる。

ホッとした私は、「これで3つ欲しいんだが」と答え、クレジットカードを差し出しました。

スコットに続いて「自分で払うわよ」というマリアンヌも、押し黙って私のクレジットカードを処理している男の雰囲気を察知してか、すぐに納得してくれたようです。

「本当は今夜から君等は僕のメンローパークのアパートのお客様になっていたはずなんだから、ここは僕が払うのを許してくれるよね」

私が2人に釈明しながら宿帳に記入している間に、スコットは事務所の壁に貼ってあった付近の地図を眺めていたのですが、不意に声を上げて誰にともなく告げました。

「ワォー、この村の西の山奥には高放射能レベルで立入禁止のマークがでかでかと記されているじゃないか。いったい何があるんだ?」

3つの部屋のキーを渡し終えた年寄りは、やはり無表情のまま答えたのです。
「政府が核爆弾の実験をやっているから、一般人は入れない地区になっているだけだ」
アメリカが地下核実験を中止していることを知っていたスコットは、
「それは変だね 、もう政府はだいぶ前から核実験をやっていないはずなんだが。立入禁止にする理由はないのに」
と食い下がりました。
私達の顔をチラリと見やった男は、初めて表情にわずかの躊躇の色を見せながら、小さな声でこう言ったのです。
「あの山の向こうで政府が何をやっているかなんて、詮索しない方がいいんだ。そりゃあ、この村から毎日電気関係の仕事でそこに通っているダチもいるし、おいらだって本当は誰かにぶちまけたくてウズウズしているんだがね。だが、そんなことをしたら最後さ。何せ、村の皆は、もし山向こうのことを口外したら裁判で弁護士を付ける権利を放棄するって契約書にサインさせられているんだ」
「じゃあ、あんたはあそこに何があるかは知っているんだね?」
という私の質問には答えず、男はカウンターの上のしわくちゃになった注意書きをボールペンで叩きながら、
「さあね。まあ早めに飯でも喰って、明日はさっさと出発することだね。こんなとこに、長居は無用さ」
と再び無表情に戻って言い放ったのです。

3人が注意書きを覗き込むと、そこには古いタイプライターで打たれた警告がありました。

「このモーテル内の通話は全て記録されていることをご了承下さい」

読み終わったスコットは無言で「ワォー!」とばかりに私とマリアンヌを振り返り、作ったような大声で呼びかけてきました。

「確かに、腹ペコで死にそうだ。旨いものでも喰いに行くとするか。ところでご主人、この近くにいい店はあるのかい?」

 

事務所を出た私達は、それぞれの荷物を各自の部屋に置いてから、老人が教えてくれた村に2軒しかないレストランのうち、まともだという方の店を探し、とにかく腹ごしらえをすることにしたのです。

村のほぼ中央に位置する木造の店は、半分がドラッグストアーをやっている簡単な食堂で、既に子供連れの客が2組入っていました。

私達がテーブルにつくと、店の人間も先客も無言でこの3人の余所者を眺め回し、

そのあからさまな視線に十分に慣れてしまった頃、やっと店の女将がメニューを持って近寄ってきたのです。

その間、店の中にある話し声といえば、私達3人の戸惑ったような小声の会話だけだったにちがいありません。

子供も大人も、皆押し黙って食べているのです。

 

急に食欲が減退したかのようだった私は、しかしスコットやマリアンヌに続いてリブ・ステーキを注文し、少しリラックスしようとビールかワインを持ってきてくれと頼みました。

その瞬間、店の中の空気は前以上に凍り付き、客も含め店にいた全員が私達のことを、さも犯罪者のように見据え始めました。

女将は溜息をつきながら、

「ここじゃあ、アルコールは出さないんだ。飲むんだったらアイスティーかレモネードにして、後で村はずれのモーテルの向こうにあるバーに行って飲んでおくれ」

と告げると、私の顔を覗き込んでいます。

「オーケー、じゃあアイスティー」という私の言葉を合図に、先客達は再び異様な静けさの中で黙々と食べ始めました。

「やっぱり、ここはネバダなんだ。賭博や核実験は平気でも、子供の前でビールを飲むのは御法度。なんてこった!」

スコットの言葉を皮切りに、私はさっきのモーテルの話題に転じました。

「核実験はともかく、いったいあの山の向こう側では何がおこっているのかなあ。モーテルの客の通話を記録するなんてのは、このアメリカじゃあ絶対に許されないことなんだが」

周りの客や店員も全く無言で聞き耳を立てているように感じた3人の話し声は、自然とヒソヒソ声になっていました。

「これじゃあ、まるでお葬式ね。村の人達も異常にピリピリしているみたい。今朝行ったブルー・ダイヤモンドよりは人が多いみたいだけど。いったいあの山の向こうには何があるっていうの?」

アイスティーを飲みながら、マリアンヌはこんなのもうたくさんという表情を作ってみせました。

そのとき、奧から皿を運んできた店のオヤジ風の厳つい男がテーブルに近づき、

3人の余所者の顔を眺め回した後、私の方に向かって話しかけてきたのです。

「ジャパニーズ?」

頷く私に、笑みを浮かべた男は、立て続けに喋り始めました。

「そうか、懐かしいな。俺は海軍でヨコスカにいたんだ。コンバンワー。ハハ、日本語はからきしだがね。それに、俺の妹は日本人と結婚してホッカイドウに住んでいるんだ。いやあ、この村で日本人と合えるのは何年ぶりかな」

見かけの割に打ち解けた感じがしたのは、この男が大の日本びいきだったからだとわかった私は、少し安心して握手しながら聞いてみました。

「横須賀の海軍基地ですね。僕は何度か近くを通ったことがありますよ。おまけに、今はメンローパークに住んでいるのでベイエリアの海軍基地もお馴染みの風景です。でも、この辺じゃあ、日本人の旅行者なんかは10年に一度も来ないでしょう?」

「ハッハッハー。そりゃあ、普通はそうなんだがね。あんた、それが何年か前に日本の雑誌かテレビの取材だとか言って、数人の日本人が来てからは、時たま見かけるようになったんだ」

大声で笑い飛ばす男の話は、他の客もよく聞かされていたとみえ、他の客や女将も先程までの無表情とはうって変わった笑顔でこちらのテーブルの方を眺めていました。

スコットやマリアンヌも、安堵の表情に変わり、早速に男に質問をぶつけていました。

「取材って、いったい日本人がこんな田舎の村に何を調べに来るんだい?」

オヤジはスコットの顔を覗き込んで、

「あんた、知らないのかい。あの山の向こうのことさ」

と言いながら、錨の入れ墨のある毛深い腕を山の方角に延ばしたのです。

「連中はこの辺りの奴等から、深夜に飛んでいる変な光る物体のことを聞き出そうとしていたんだが、結局誰も口を開かないんで、レイチェルでバーをやっている俺のダチの所に行くしかなかったのさ」

レイチェルといえば、私達がブルー・ダイヤモンドの保安官から最後に聞いた、

「面倒なことはアラモかレイチェルでやってくれ」

という台詞に出てきた名前ではありませんか。

「レイチェル!」

互いに顔を見合わせた私達3人がレイチェルに興味を持ったことを見て取ったオヤジは、さらに続けました。

「ああ、そいつはあの集落でバーをやっているんだが、客集めが上手くて、まあ差し障りのない範囲で結構喋っているからな。月に一度UFOオタク達を集めて、堂々と集会を開いていりゃあ、まあそうあからさまに文句も言えないだろうし。それに、基地の連中もあの店に飲みに行くこともあるから、今更ぶっ潰すわけにもいかないわけさ。あの砂漠のど真ん中で冷えたビールが飲める所といや、他にはないからね」

またまた飛び出してきたUFOにも驚きましたが、私達が興味を持ったのは、オヤジが「基地」と言ったことでした。

「え、基地って、あの山向こうには軍の基地があるのかい?」

すかさず突っ込んだスコットの質問で、自分が口を滑らしたことに気づいた男は、

「え、基地・・・。ヨコスカのことさ。海軍の連中はしょっちゅう飲んでるからということさ」

と言い繕ったのですが、黙って見ている私達に観念したとみえて、奧に引っ込む前にこう言い残したのです。

「いや、日本人が懐かしくて、つい長話をしてしまった。まあ、忘れてくれ。あの山の向こうに何があるかなんて、実際に行ってみなきゃわかりっこないんだ。そりゃあ、何かはあるだろうがね。あんた等、行ってみようなんて気は起こさない方が身のためだぜ。結局、取材に来た日本人だって、あちこちで話を聞いただけで、実際にはあの山向こうには行けなかったんだ。行ったら最後、戻っちゃこれないと聞きゃあ、誰だって行きやしないのさ」

 

厨房のドアを開けて消えようとする男に、スコットはさらに質問を浴びせました。

「でも、あの山の向こうに行く道はあるのかい?」

男は再び無表情な顔で振り向き、

「さあね、俺のダチがしょっちゅう言ってることにゃあ、隣村のアッシュスプリングスから375号線をレイチェルに向かって30マイル程走った所に山の方に真っ直ぐに延びたダートロードがあって、それを延々と行けばお望みの場所に行けるそうさ。だがね、妹が日本にいる俺からの最後の忠告だ。もし、行くんだったら、水とガソリンはいっぱい積んでおきな。おそらく、今夜あの375号線を走るのはあんた等の車だけだろうから、途中でエンコしたら終わりだからな。それに、もし他の車と出会ったら、いいか、気をつけるんだ」

 

第5回 「エリア51探検記(3-2)」に続く

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