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【第3話】エリア51探検記(2-2)|ヒカルランドClub (ヒカルランドクラブ)


【第3話】エリア51探検記(2-2)

編集部註

当連載は保江邦夫氏が過去に『バウンダリー』という雑誌にペンネームで連載していた原稿をまとめたものです。ペンネームに関わる部分など、一部改稿致しました。

7.謎の巨大トンネル

臼状の窪地の中の集落を見下ろす路肩に再び車を止め、暫し村の方を眺めた3人は、

不意に保安官事務所で聞いたおばさんの話を思い出し、一斉に振り向いて、

村に入る前には気にも止めなかった、小高い山々の連なりが作る天然の防壁の方を見つめました。

荒れ果てた山肌を波打たせるように際立つ絶壁は、何人をも山の向こうから隔離し、

さっきの小さな村を道路一本の生命線を残して幽閉するに十分なほど、

遥か彼方まで続いているように見えたのです。

「あれは何かしら?」

少し先を指さすマリアンヌの白い指から目で追っていったスコットと私は、

それまで乾燥した岩肌に隠れて人目を引くことのなかった、

同系色のコンクリートで作られた箱形の建物が絶壁の下から広がった荒れ地の中に建っていることに気づきました。

「あ、あんな所に変な建物がある。

窓もないし、あれ、屋根の上には高い鉄塔があって、

一番上の部分に大きな白いパラボラアンテナがあるじゃないか!」

スコットは、少し近づいて注意深く眺めていたのですが、

不意に私やマリアンヌの方を振り返って言いました。

「見てごらんよ。普通ならパラボラアンテナは山の上に設置された他のパラボラアンテナの方を向いているか、

あるいは衛星用ならば空の彼方を向いていなければいけないんだが、

あれはさっきの村の真ん中に向けられているじゃないか」

私も村の方に目をやってみましたが、

確かにパラボラアンテナは村に向けられているにも関わらず、村の中にはそれからの電波を受信するようなアンテナは1本も見あたりません。

「もっと近づいてみよう」

2人を促すように、私は小走りで測候所のような建物に向かって歩き始めたのです。

image001_003_02

少し行くと、この建物がコンクリートのブロックを積み上げて作られた、全く窓のない倉庫のような作りになっているうえに、

ぐるりと高いブロック塀で遮蔽されていることがはっきりとしました。

しかも、さっきは影になって見えなかった所に、ジープが1台駐車してあるようです。

おまけに、駐車場も含めて、建物の周りは高い金網のフェンスで囲まれていて、

誰も近づけないようになっていたのです。

「ワォー、こいつはすごいや。しかも、誰か中にいるんだ」

スコットも私もこの変な建物に気を取られていたため、全く気がつかなかったのですが、

ひとり辺りをキョロキョロと見ていたマリアンヌが、後ろに連なった天然の防壁の中に幅3メートルほどの狭い溝が奧深くまで刻み込まれているのを発見しました。

「見て、あれは何?」

私とスコットが振り向くと、高い山肌に垂直に鋭い切れ込みが入っていて、深い溝のようになって山の向こうへと続いているように見えました。

しかも、山の向こうからその溝を通った延長に、あの変なコンクリートの建物が建てられているのです。

この切れ込みがあまりにも狭く鋭いため、少しでも斜めに山肌を見ると、完全に荒れ山の斜面の風景に隠されてしまい、

道路を走る車からは全く見えないようになっているのです。

ブルー・ダイヤモンドの村の中心を狙ったパラボラアンテナを掲げた正体不明の窓のない建物の存在といい、

その後ろから人知れず山の向こう側に延びている細く鋭い割れ目の存在といい、

とても尋常とはいえない様子に戸惑っていた3人は、

ごく自然に建物や村から見えないように身を屈めて、割れ目の手前まで行ってみることにしました。

雰囲気はだんだんとスパイ映画のシーンのようになり、私達はもう無駄口を叩くことはありませんでした。

 

近くで見ると、確かにその割れ目は山の向こうまで延びているようでしたが、

よく見ると、それは干上がった渓流の跡のように、所々に小さな滝であったような壁を残して、緩やかに山の奥に向かって川底が登っていく様相を示していました。

「何だ、これは人工のものじゃない」

スコットはそう言いながらも、滝だった所をよじ登っていきました。

私は少し不安げなマリアンヌと一緒に、滝の下で待つことにしていたのですが、

「おい、君達も来いよ。すごいぜ、こいつは。

どこまでもこの調子で続いていて、山の向こうまで行けそうだ」

というスコットに促されて、渋々と後をついて登っていくことにしたのです。

途中には、棘のある砂漠地方に特有の草があり、私達は手足に傷を作りながら、

それでも何かに取り付かれたかのように、山の向こうを目指して枯れた谷川の跡を登っていきました。

2時間も登り続けた頃には、私達のいる切り立った谷底と山肌の高度差は数十メートルになり、

このルートを使わない限り山の向こうへ行くことはできないのだと実感できました。

 

「こいつは、ひょっとすると渓流を人工的に干上がらせて作った、山の向こうへの秘密の抜け道なのかもしれないぜ。

だとすると、一体全体、この奧には何があるというんだろう?」

小休止で座り込んだとき、ひとり元気なスコットは、いささかバテ気味の私とマリアンヌに声を掛けてきました。

山の向こうに興味を持たせれば、元気も出るかもしれないと考えてくれたのでしょう。

「もう2時間以上になるけど、まだまだ続いていそうよ。2人とも、どうするの?」

マリアンヌの訴えるような目を遮って、スコットは立ち上がりざまに言いのけたのです。

「どうするって? いまさら引き返したって、何もわからずじまいになるだけさ。

もう少しがんばろうぜ」

私とマリアンヌは渋々と立ち上がり、さらに1時間以上スコットの後ろに続いたのです。

こんなに長時間になるのなら、車から水のボトルを持ってきておくんだった。

ネバダ砂漠の乾燥しきった空気の中を喘ぎながら悔やみ始めた私がスコットに声を掛けようとしたそのときです。

逆に、少し先を進んでいたスコットから、溜息混じりの呼び声が発せられました。

「くそー、ここで二股にわかれている。どうしよう」

見ると、右の方に進むには、3メートル程の高さの滝跡をよじ登っていかなければなりませんが、

軽装の私達でも可能な程度に緩やかなものにはなっていました。

左の方はこれまでどおりのペースで進めそうで、しかも徐々に傾斜角を大きくしていっているようで、

とりあえず登り切ったところから、ひとつの山頂に簡単に到達できそうな雰囲気でした。

ネバダ砂漠の乾燥した空気とジリジリと照りつける紫外線たっぷりの日差しのことを考えれば、

左側の経路で手近な頂に登って、まず山の向こう側の様子を見ておいてから、いったん車まで引き返し、

水を補給してから再び右側の滝跡を登って行ってみるのが正解。

すぐにまとまった3人は、一目散に山の頂を目指したのです。

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山頂に出る少し前から、遥か下方に小さくなった村を見ることができるようになったのですが、

そのことは逆に村や測候所のような変な建物からも私達の存在が見えるということを意味していました。

何やら、測候所の近くでキラリと光ったような気になった私は、

「もし、我々3人がこの山頂にいることが誰かにわかったら、いったいどうなるんだろう?」

と2人に聞いてみました。

「さっきのおばさんが言っていたように、誰かが軍隊に通報してヘリコプターが出てくる?」

スコットは笑いながら、しかし半ば真剣な口調で、こう締めくくりました。

「まあ、大丈夫とは思うが、今回はあまり長居をすることはないさ。

そこの山頂から反対側を見たら、すぐにさっきの川底に戻ろう。

万が一何か飛んできても、あの切り立った峪底なら降りてはこられないだろうし」

私達は最後の力を振り絞って、山頂へとダッシュしたのです。

できるだけ村から見つからないように、頂の岩影に身を伏せた3人は、恐る恐る山の向こう側を覗きました。

「くそっ、もうひとつ向こうにも山が連なった壁があるじゃないか!」

天を仰いだスコットの言うとおり、目の前には私達のいる頂きが連なった山々とは別の連なりが広がり、

その向こうにやっと広大な平地が広がっているように映ったのです。

「あれを越えない限り、おばさんの言っていた山の向こうには行けないんだ。

ということは、あの向こうにブルー・ダイヤモンド・ヴォーテックスがあるというわけか」

私も脱力感とともに、ぼんやりと遥か山向こうを眺めていたのですが、

突然のマリアンヌの声に我に帰りました。

「ねえ、見て。ここからさっきの右側の滝跡の上から延びている白い小径が見えるわよ。

どうやら、あっちが本命だったようね。ジープの轍が所々に残っているもの」

急いで視線を移した私とスコットの目に、確かにさっきの滝跡からくねくねとつながった、ジープなら十分に走れそうなくらいにおだやかな川底が飛び込んできました。

しかも、そこには轍が残り、山々の中腹をなめ回したあげく、さらに向こうの山々の間に消えていっているではありませんか。

「なるほど、あそこまで行けば、後は楽に山の向こう側に行けるというわけだ。

しかも、運が良けりゃヒッチハイクもできそうだぜ」

スコットの言葉を聞きながら向こうの山肌に小径が消えていく辺りを眺めていた私とマリアンヌは、ほとんど同時に2つ並んだ真っ黒な点を見つけたのです。

「あれは何?」

スコットも気がついた頃には、山腹に開けられたトンネルの入り口が2つあることがわかりましたが、

ここからの距離を考慮に入れると、ジャンボジェットの胴体がすっぽりと収まるくらいの巨大なトンネルのようです。

付近に人影はなく、ただトンネルを出た所からは舗装なしの整地された広大な道が広がり、

その先には銀色に輝くドーム状の明らかに金属でできた天文台のような建物が山肌から突き出ていました。

しばらく眺めていたのですが、車の出入りも全くないようで、砂埃が舞い上がることもありませんでした。

その日は金曜日でしたから、何らかの施設であれば、必ず人の出入りがあるはずですが、

そこは異様に静まり返ったまま、まるで時間が止まっているかのような印象を受けたのです。

3人とも、もう少しこのまま見ていたかったのですが、なぜかあまり長居をしてはいけないと思い、誰からとはなしに戻っていくことにしました。それに、もう4時間近く水なしで動き回っていたため、

本能はひたすら水を求めて、麓に止めた私のタウンカーのトランクを目指していたのです。

やっとのことで車にたどり着いた私達は、

3人とも大きなペットボトルの水を頭から浴びせかけるように飲み干し、

車体を背もたれにして一斉に路肩に座り込んでしまいました。

「これから、また行って、滝跡を登るわけ?」

もう無理だと言わんばかりの口調で訴えるマリアンヌの向こうに、

ゆっくりと近づいてくる人影を見つけたスコットと私は、重い体に鞭打って立ち上がったのです。

何となく警戒しなければいけないと思った2人は、マリアンヌを間にはさむように立って、男の方を睨んでいました。

近くには他の車は止まっていませんでしたので、男は明らかに村か測候所のような建物かのどちらかからやってきたことは、すぐに見当がつきました。

「車のトラブルかね?」

そう言いながら近づいた男の腰に下げられた拳銃と服装から、

それが村のシェリフであろうことも明らかでした。

「いや、別に」

スコットが答えると、太り気味の保安官は3人の顔を眺め回しながら言ったのです。

「今朝事務所にやってきたインディアンの仲間っていうのは、あんた達だね。

それで、いままで山に登ってきたというわけかい。

まあ、この辺の山は一応パブリックだから、違反じゃあないがね。

あんまり俺の管轄でウロウロしないでもらいたいもんだ。

その馬鹿でかいカリフォルニア・ナンバーの車はずっと路肩に止めっぱなしだったようだから、切符を切ってもいいんだが、

俺としてはそれより早く出ていってもらった方がありがたい。

この辺じゃあ、もう何年もあんたのような連中は寄せつけていないのが、俺の勲章だったんだ。

面倒事なら、他の奴等のように、アラモかレイチェルの側でやってくれ」

そう一方的にまくし立てたシェリフは、半ば脅すかのように腰のホルスターを手で軽く叩きながら、私達に背を向けてゆっくりとした足取りで村の方に帰っていったのです。

「やっぱり、下から見てたんだ。

しかし、山に登ったくらいで、何で追い出されなきゃいけないんだ!」

むきになるスコットを宥めながら、私は保安官が言った

「面倒事はアラモかレイチェルでやってくれ」

という台詞が引っかかり、もうだいぶ西に傾き始めた太陽を指さして、2人に提案したのです。

「もう2時間ほどで日も暮れるし、それに昼飯抜きで3人ともくたくたに疲れている。

それに、これからメンローパークまで運転するのは、今の僕には無理な相談だ。

そこで、どうだい、この際、保安官お勧めのアラモとやらに行ってみないかい。

幾ら何でも、安いモーテルとレストランくらいはあるだろうから」

すぐに地図を広げたスコットが見つけたアラモは、ちょうどさっきの山頂から眺めたもうひとつ向こうの山壁の遥か先の方に位置する小さな村だったのですが、

不思議なことにもうひとつのレイチェルという地名は地図には見あたりませんでした。

アラモに行くには、一旦ラスベガスまで引き返し、そこからフリーウェイで砂漠の中を東北の方向に走り、

1時間ほどで田舎のハイウェイに乗り換えていく方法しかなさそうです。

全行程で3時間程度の道のりのようでしたが、疲れ切った身体を休めることができる所ならどこでもいい。

そう考えて賛成したスコットとマリアンヌでしたが、まさか明け方まで一睡もできなくなる恐怖の一夜を過ごすことになるなどとは、思いもよらなかったのです。

車に乗り込んだ3人は、飲み過ぎた水で空腹をごまかしながら、

まだ知らぬ「エリア51」に隣接する村アラモへと、ブルー・ダイヤモンドを後にしました。

間近に迫り来るあの恐怖の体験のことも、

砂煙を上げて出ていった私のタウンカーをずっと見守っていた双眼鏡越しの眼の存在も知らず。

第4話「エリア51探検記(3-1)」に続く

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