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【第7話】エリア51探検記(4-1)|ヒカルランドClub (ヒカルランドクラブ)


【第7話】エリア51探検記(4-1)

編集部註

当連載は保江邦夫氏が過去に『バウンダリー』という雑誌にペンネームで連載していた原稿をまとめたものです。ペンネームに関わる部分など、一部改稿致しました。

 

12.空飛ぶコンボイ

深夜3時をまわった頃、もう大丈夫だろうと思った私達は、モーテルのそれぞれの部屋に戻り、とにかく夜が明けるのを待って再度山向こうに通じるダートロードを走ってみることにしました。

明るくなってさえいれば、何も恐いものはありません。

各自、夜明けまでの数時間を熱いシャワーを浴びて眠ることに費やすことにしたのですが、

私は山登りと長時間の運転で疲れ切っていたため、ベッドに横たわったが最後、不覚にもそのまま深い眠りについてしまったのです。

まだ恐怖が冷めやらぬマリアンヌやスコットは、それぞれ毛布を被ってはみたものの、目が冴えてとても眠ることはできなかったそうです。

いつモーテルの前にあのジープがやってくるかもしれない。

2人ともそんな警戒心を抱きながら、ベッドで震えていました。

もう93号線を走る車の音も途絶え、辺りには気味の悪い静寂だけが漂い、

スコットもマリアンヌも早く夜が明けてくれるよう時計を見ながら祈っていたのです。

マリアンヌの腕時計が4時12分を指したとき、彼女の心臓は一気にはちきれそうになり、

その激しい鼓動にダブるように、遠くから100台以上の大型トラックが集まったコンボイが近づいてくるような音が聞こえ始めたのです。

さっきの追跡ジープの連絡を受けた軍隊のトラックが憲兵を満載して私達を捕まえに来た!

そう考えることしかできなかったマリアンヌは、恐怖に怯えながら頭から毛布を被って神に祈り続けました。

コンボイの音は段々と大きくなり、毛布を被って耳を両手で押さえていても、はっきりと聞こえるようになり、

モーテルの古い建物も微かに振動しているように思えたのです。

怯えきったマリアンヌは、パニック寸前の自分を押さえ、ひたすらコンボイが通り過ぎてくれることを祈っていたのですが、

ふとコンボイの音が尋常ではないことに気づきました。

「この異様な音は、ハイウェイの方からじゃなくて、上の方から聞こえてくるわ!」

空飛ぶコンボイ!

マリアンヌがそう信じたものの音は、まるでモーテルの上を人が走る程度のゆっくりとした速さで飛び越えていくように頭上に鳴り響き、

その後徐々に山向こうの方角に移動しながら、小さくなっていったのです。

「大丈夫、行ってしまったみたい」

自分自身にそう言い聞かせたマリアンヌがベッドの中で丸まって震えていた頃、

隣の部屋で終始カーテンの隙間から外の93号線の方を見ていたスコットは、青ざめた顔で呆然としていました。

マリアンヌ同様、異常な追跡劇の恐怖と興奮で一睡もできなかったスコットは、

遠くから異様な激しい音が近づいてきたとき、やはり軍隊のトラックに乗ってMPがやってきたと思い、

すぐに逃げられるようにカーテンの影から窓越しに道路の方を見やったのです。

音はどんどん近づいてくるにもかかわらず、窓の外は完全な暗闇の世界で、トラックが走っている気配もありません。

「何だって!」

スコットは目を見開き続けたのですが、外の暗闇の景色には何の変化もなかったのです。

異様な音は既にモーテルの頭上に達し、一瞬軍隊のヘリコプターではないかと思ったスコットでしたが、

舗装していない駐車場に砂埃が舞い上がる様子もなく、ローターに煽られた風で木々の枝葉が動くそぶりさえ見えないことから、

頭上をゆっくりと移動していくゴゴーっという音の正体すらわからないまま、段々と山の向こうに向かっているように思えました。

「外に出てモーテルの上を見上げれば音の正体がわかるはずだ!」

内心そう考えたスコットの脳裏を、カナダの大学院の友人が話していたUFOによる人間の誘拐事件の話がかすめたのです。

もしモーテルの上を不気味な音をたてながらゆっくりと移動しているものがUFOだとしたら、

ここで出ていってしまったら最後、それこそ青白い怪光線をあびせられて捕まってしまうかもしれない!!

いつもなら笑い飛ばしていたはずの友人の話も、

ブルー・ダイヤモンドで見つけた正体不明のトンネルや、

深夜の砂漠の中で無灯火で追尾していたジープに不意にサーチライトで威嚇されたあげく、

延々とカーチェイスをやって逃げ延びた直後のスコットには、妙に生々しく思い出されたのです。

スコットは部屋の中に留まったまま、カーテンの隙間から少しでも何かの手がかりが見えないかと、

音が山向こうに消えてしまうまで、まんじりともせず外を見つめるうち、

これはあの山向こうにあるものに興味を持った者への警告を兼ねた威嚇行為なのではないかと考え始めた途端、

背筋にゾクッとする気配を感じ、恐怖に青ざめてしまいました。

「ひょっとすると、俺達はとんでもない連中を相手にしてしまったのかもしれない。

夜が明けたらクニオの部屋に行って、善後策を練ることにしよう」

そう呟きながら、スコットは私もマリアンヌも部屋から忽然と姿を消してしまっているかもしれないという、最悪のシナリオさえ思い描いていたそうです。

ドンドン。「クニオ、いないのか? スコットだ。起きろ、クニオ」

遠くにドアを叩くスコットの呼び声を聞いていた私は、徐々に覚醒していき、

ぼんやりと開いた目に飛び込んだ見慣れぬ古天井の模様から、自分が昨晩のモーテルの部屋のベッドで眠っていたことに気づきました。

「スコット? いま開ける、待ってくれ」

そう言いながら、私は昨夜の服のままチェーンを外し、ドアのノブに手を掛けた途端、

勢いよく外に引っ張るスコットにつられて、一歩外の夜明けの世界へとワープしたのです。

「ヘイ、スコット。何をそんなに慌てているんだい?」

目をこすりながらフラフラとしている私を見たスコットは、

ビックリしたような、それでいて怒っているような顔でまくし立てたのです。

「何をのんきなことを言っているんだ。あれは、奴等の完全な威嚇行為だ。

これ以上山の向こうに関わったなら、重大な危険が待ち受けていると警告してきたんだ」

「何だって?

そりゃあ、無灯火でつけていたジープが一斉にサーチライトをあててきたんだし、

その後は執拗に追跡してきたんだから、威嚇行為といえば威嚇行為だったかもしれない。

しかし、もう日も昇ったようだし、何も今更どうのこうの騒ぎ立てすることもないだろう。

まあ、朝飯でも食ってから、近所の保安官事務所で昨晩のことを話しておくのもいいかもしれないが・・・」

そう言いながら、私はスコットの顔に昨晩以上に容易ならぬ恐怖の形相を見つけ、言葉を飲み込んでしまったのです。

「クニオ、起きてなかったのか?!

連中、4時過ぎにこの真上をゆっくりとUFOを飛ばしやがったんだ。

明らかに、俺達に対する警告さ」

4時? UFO? モーテルの真上?

私には何のことかさっぱりわからなかったのですが、

スコットの声で安心して部屋を出てきたマリアンヌの説明で、やっと全てを理解したのです。

「そんなことがあったのか!

クソッ、僕はあれからすぐに眠ってしまい、さっきスコットに起こされるまで、完全に意識不明だったんだ。

見たかったなー。すぐに電話で起こしてくれればよかったのに」

これに対するマリアンヌの答は、寝惚けて悔しがる私を納得させるに十分なものでした。

「私だって、恐くて恐くて、毛布を被ったまますぐに電話しようと思ったんだけど、

電話に手を伸ばしたときにあの事務所に書いてあった警告書を思い出して、

電話はまずいと思いとどまったのよ。

通話が記録されているなら、それこそ連中にも筒抜けというわけだろうし。

ひょっとすると、このモーテルに私達が泊まっていることを確認しようとしてのことだったら、

何も騒がない方が安全かもしれないもの」

スコットの説明はさらに迫真ものでした。

「そうさ、俺だってすぐに外に出て何が飛んでいるのかを確認して、

クニオの部屋に行って2人でもう一度じっくりと正体を暴いてやろうと思ったんだが、

もしあれがUFOなら、外に出た途端にさらわれてしまい、

皆が面白おかしく言うように変な生体実験をされてしまうかもしれない。

そう思ったら、もうカーテンの隙間から外を眺めるのが精一杯さ」

頷きながらスコットとマリアンヌを見ていた私の視界の端に、

モーテルのオヤジがリネンの入った手押し車を押していくのが入ってきた瞬間、

ドコンという地鳴りと共に3人とも身体ごと地面から突き上げられたような激しい衝撃を受け、

咄嗟に身を屈めるようにしながら互いの安全を確認し合いました。

マリアンヌの顔は恐怖に怯え、スコットも突然のことに表情を強張らせていました。

それくらいすごい振動と衝撃音が突然にモーテルの前に立っていた私達を襲ったのですが、

それよりも私が驚いたのは、手押し車を押して駐車場を歩いていたモーテルの管理人の様子だったのです。

なぜなら、本当に突然の地響きと衝撃音だったにもかかわらず、何と管理人はまったく平然としたまま、

まるで何も特別のことはないかのような雰囲気で自分の仕事を続けていたからです。

空を見上げてジェット戦闘機か何かの衝撃波だったのかどうかを見極めようとしていた2人に声を掛けた私は、

モーテルのオヤジが建物の影に隠れてしまうのを待って、小声で話し始めました。

「こいつは、変だぞ。

さっきから見ていたんだが、モーテルのオヤジはあの強烈な衝撃音や脳天まで突き抜ける地面の振動など、まるで眼中にないかのようだった。

ということは、さっきの衝撃が来ることが予めわかっていたか、

あるいはこの辺りじゃあ日常茶飯事で、何も今更慌てふためく必要もないかのどちらかだ。

しかし、いずれにせよ、こんな何もない砂漠の真っ直中で、

昨夜の追跡劇といい、僕が眠っている間のUFOの低空飛行といい、さらにはさっきの超弩級の衝撃音といい、

こんなものがそうしょっちゅうあるわけはないんだ。

ということは、全ては関連して起きていると考えた方が自然じゃないか。

やはりスコットの言うように、明らかに僕らに対する威嚇か警告なんだろう。

しかし、これだけのことをやるには、かなりのお金がいるはずだから、あの連中はただ者ではないな。

やっぱり連邦政府が絡んでいることは間違いなさそうだ。さて、どうしたものかな?」

頷きながら聞いていたスコットに、「そうだろう、やはり警告だ。どうしよう」と慌て始めている様子が見えたので、私は少し毅然とした態度でこう続けたのです。

「いや、たとえ相手が連邦政府であっても、

天下の公道の上やパブリックランドの中で一般市民を威嚇するなんてのは、この合衆国では絶対に許されないんだ。

責任ある自由の国、それがこの国の発展を支えてきたんじゃないか。

それが、もし昨夜からの威嚇行為が本当にあの山の向こうにあるかもしれない政府がらみの基地か何かに注意を向けることに対する警告ならば、

我々一般市民は頑としてそれに立ち向かう勇気と気概を持たなきゃあならないんだ。

このままじゃあ、引き下がれないぜ」

幸いにも、この私の幾分市民運動家っぽい演説が好評だったのか、スコットも俄然元気になってきました。

「確かにそうだ。

幾ら連邦政府だからって、一般市民に威嚇行為を行うのは、明らかに組織犯罪だ。

こいつは、あの山向こうに何があるのか、やっぱりこの目で確かめておく必要があるな。

まあ、昼間なら向こうもそう簡単に威嚇行為には走れないだろうから。

朝飯を食ったら、すぐに行ってみようじゃないか」

いったいこの集落のどこに朝食を食べさせる店があるのと言わんばかりのマリアンヌは、

「そんなことなら朝のうちに片づけて、どこかちゃんとした所でゆっくりとお昼を食べた方がいいわよ。

さあ、2人とも、荷物をまとめて出発よ」

とまくし立てながら、さっさと旅支度を整え始めました。

一瞬ポカンとしたスコットと私は、互いに顔を見やって肩を竦めてから、それぞれの荷物をタウンカーのトランクの中に勢いよく放り込んだのです。

「さあ、あのダートロードの先に何が現れるか。

まあ、朝飯の食えるマクドナルドは無理だろうけどね。よし、レッツゴー」

そう言いながら、私はリンカーンのタウンカーを再び93号線に沿って北上させたのです。

第8話 「エリア51探検記(4-2)」に続く

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