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【第6話】エリア51探検記(3-3)|ヒカルランドClub (ヒカルランドクラブ)


【第6話】エリア51探検記(3-3)

編集部註

当連載は保江邦夫氏が過去に『バウンダリー』という雑誌にペンネームで連載していた原稿をまとめたものです。ペンネームに関わる部分など、一部改稿致しました。

 

 

10.真夜中のカーチェイス

 

「おい、道があった! 止めてくれ!」

スコットの叫び声と同時にブレーキを踏んだのですが、

時速60マイルで走っていたタウンカーが止まったのは10mほど先でした。

私は道路の真ん中で車を止めたまま、スコットの顔を見やったのです。

「本当に真っ直ぐなダートロードがあったのかい?」

私とマリアンヌの顔を交互に見ながら、スコットはかなり興奮した口調で、しかしなぜか極端な小声で答えました。

「ああ、絶対にあの道だ。

食堂のオヤジが言っていた山の向こうの基地に通じるダートロードさ。

あれをずっと真っ直ぐに行けば、その先に本当は何があるのかわかるはずだよ。

さあ、行ってみよう」

マリアンヌと私はといえば、互いに顔を見合わせながら、さてどうしたものかと躊躇していました。

時間はもう深夜2時近くになっていましたし、真っ暗闇の砂漠の中にいるのは私達だけなのです。

食堂のオヤジが言っていたとおり、この375号線を夜に通る車など1台もいないようで、もう2時間も他の車は見ていません。

こんな状況でダートロードを走っていくのは、その先にあるものが例え何であろうとも、オーバーに言ってしまえば自殺行為。

「なあ、スコット、それにマリアンヌ。僕の車はリンカーンのタウンカー。

つまりビバリーヒルズでなら気持ちよく乗れても、

フォードのエクスプローラーのように目をつむってもダートロードを走れるというわけではないんだ。

しかも、夜明けまで待っても他の車なんて通りっこないこんな砂漠のど真ん中で、

ダートにタイヤを取られたら最後、3人ともコヨーテの餌になるのは確実さ。

そこで、この車の持ち主である僕からの提案なんだが、

どうだい、今夜のところはこのままモーテルに戻って、明日の朝に行ってみようじゃないか。

明るくなってからなら、いくら僕が運転するタウンカーでも、ダートに注意してゆっくりと進めば行って行けないことはないからね」

確かに、夜に初めてのダートロードを走るのは、あまり楽なことではありません。

しかし、ダートとはいっても、あの道はどこまでも真っ直ぐに延びているだけですから、

行こうと思えば行けるくらいのことはわかっていました。

それでも、私がスコットに思い留まらせようとしたのは、何かいやな感じがしていたからだったのです。

ちょうど、昔UFOが墜落したというキングマンの街からルート66を離れ、

フーバーダムに向かう途中の道でいつの間にかハイウェイパトロールにつけられていた、

そんなことにつながるような不安を隠せなかったのです。

 

「ヘイ、怖じ気付いたのかい。

あのダートロードを行ったところで、実際は何もありゃあしないさ。

しかし、まあ、このデラックスな車であの道を走るのは、考え物ではあるね。

もちろん、明日の朝明るくなってからとことん行ってみるのは賛成だけど、

せっかく今夜ここまで来たんだから、あと5分だけあのダートロードを走ってみないか?

足周りがダメなようならすぐに引き返せばいいんだし、とにかくあと少しだけ行ってみようぜ」

スコットだけなら私も押し切ってそのままモーテルに戻ったのですが、

マリアンヌの口から意外な言葉が出てしまったのです。

「そうね。

昼間のブルー・ダイヤモンド・ヴォーテックスの山越えのときは、

右に行っておけばうまく山向こうに行けたはずだったのに、

何も知らなかった私達は左に行ってしまい、

結局は遠くからトンネルを眺めただけで、詳しいことは何もわからず終いだったわよね。

今度も同じことじゃないかしら。

このままモーテルに戻ってしまったら、やっぱり何もわからないままだけれど、

もしさっきスコットが見つけた道を少しでも走ってみれば、

ひょっとして何かがわかるんじゃないかしら」

 

2対1ではかないません。

私はマリアンヌとスコットに頷きながら、

「オーケー、お2人さん。では、冒険といきますか」

と言いながら、前方の路肩の様子を見たのです。

コヨーテサミットのときとは違い、舗装道路の両側はすぐに砂地になっているようで、

とてもタウンカーをUターンさせることはできません。

「これはバックで戻るしかなさそうだね。

それに、どうせ後ろからも前からも他の車なんて来やしないんだから、

法律違反になっても許されるだろう」

私は助手席のスコットに同意を求めてから、

身体を捻って車の後ろに拡がった暗闇に目をやったまま、右手でコラムシフトのギヤをバックに入れました。

タウンカーのバックライトがほのかに灯り、後方の道がおぼろげに浮かび上がってきたと思った、その瞬間です。

私の視界はまばゆいばかりの閃光で塞がれ、車内の3人の凍り付いた表情でさえ、昼間のようにはっきりと照らし出されたのです。

 

「キャー!」

マリアンヌの悲鳴が聞こえる中、

私は本能的にギヤをドライブに入れ、アクセルを思いっきり踏み込みました。

キキキキキー、グルルルルー。アクション映画ではお馴染み、タイヤのゴムを焼く煙を巻き上げ、私のタウンカーは猛然とダッシュしたのです。

「全速力で逃げるんだ! ヤバイぞ!」

ほとんど同時にスコットが叫び、私は床を踏み抜かんばかりに右足に力を入れ続けながらも、

不思議にもすぐに冷静さを取り戻している自分を見つけて驚きました。

マリアンヌはしかたありませんが、

スコットまでも興奮して「逃げろ、逃げろ!」とだけ叫び続けている現状で、

頼れるのは車を運転している自分自身しかないと観念したからでしょうか。

道が真っ直ぐになった部分に差し掛かったとき、私はやっとのことでバックミラーを覗くことができたのですが、そこにはすぐ後ろを追ってくるジープ型の車のヘッドライトがありました。

 

「シット! 奴等つけていたんだ」

やっと落ちつき始めていたスコットも後ろを振り向くと、

「追いつかれるぞ、もっとアクセルを踏むんだ」

と言ったまま、再び「ヤバイ、ヤバイ」とだけ呟き始めました。

オーバードライブを外してエンジンのトルクを上げたおかげで、20mほど引き離すことができたのですが、それ以上はこのタウンカーの巨体では無理な相談。

私はこのときほどBMWにしておけばよかったと思ったことはありませんでした。

深夜の砂漠の中を突然に正体不明の車に追跡される羽目になり、必死でハンドルを操っている間、

私の頭はタウンカーのエンジン同様にフル回転を続け、もうひとりの自分が機関銃のようにまくしたてたのです。

 

「クソッ、奴等ずっと無灯火でつけていたんだ。

闇夜だって赤外線スコープをつけりゃあ丸見えだからな。

ということは、奴等は軍隊のパトロールか。

すると、あの車はハマーかジープというわけだが、

もしハマーならとっくに追いつかれているはずだから、まあジープクラスだろう。

それなら、このまま何とか振り切って走っていけないこともないな。

確か375号線の起点にあったアッシュスプリングスを通ったときガス・ステーションが見えたが、

あそこに逃げ込めば何とかなるに違いない。

いくら奴等だって、近くの住人を巻き沿いにしてまで俺達のことを何とかしようとは思わないだろう。

しかし、もしあのガス・ステーションが終っていたら? こりゃあ、やばいぜ。

このままモーテルに駆け込んでしまったら、それこそこっちの居場所を教えるようなもんさ。

いざとなったら、とにかくラスベガスまで逃げるしかないな。

あそこなら、ほとんどの連中は夜も寝ないし、どこかのカジノに飛び込みさえすればガードマンが必ずいる。

トラブルだと思えば、すぐに警察を呼んでくれるしな。

それにしても、何でこのタウンカーは鈍いんだ。

だからあのとき横に並んでいたBMWにしとけばよかったんだ」

 

私の葛藤をよそに、スコットは依然「ヤバイ、ヤバイ」と唸り続けていたのですが、

怯えながらもずっと後ろを見ていたマリアンヌの一言で急に元気を取り戻しました。

「わあ、見て2人とも。追ってきた車が止まったみたいよ。

ほら、ヘッドライトがどんどん小さくなっていくわ。

あ、Uターンしているみたい。やっと諦めてくれたのね」

ホッとしたスコットが

「やったー。ははは。やったじゃないか!」

と異様に嬉しそうな声を上げたため、私はつい助手席のスコットの方に目をやったのですが、

そのときサイドガラスの向こうの闇の中に、ふと何かが光ったような気がしました。

その直後、後ろを振り向いたマリアンヌの声が再び凍り付いたのです。

「イヤッ、さっきの車、まだ追ってくるわ。助けて!」

バックミラーで後ろを確認した私は、

「さっきの車じゃないぞ。道の脇に待機していた別の奴等が出てきたんだ。

クソッ、このやり方はプロだ」

と叫びながら、いったいこのプロの追跡手口を見せる連中をどうやって振り切ればいいのか、

これまでに見た色々なアクション映画のシーンを必死で思い出していたのです。

 

万が一のときは、何か手がかりを残しておかなければならない。

自分でも驚くほど冷静になった私は、

ダッシュボードに入れておいた古いローライのカメラを取り出して、後部座席のマリアンヌに手渡しました。

「マリアンヌ、少し元気を出してくれ。こいつであの車を写しておくんだ。

いざというときには役に立つかもしれない。あ、ストロボは焚かないようにしてくれ。

でないと、写真を撮ったことが奴等にわかってしまう」

凍り付いた車内の緊迫感に逆らいながら、マリアンヌは必死でシャッターを切っていました。

 

 

第7話 「エリア51探検記(4)」に続く

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