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【第5話】エリア51探検記(3-2)|ヒカルランドClub (ヒカルランドクラブ)


【第5話】エリア51探検記(3-2)

編集部註

当連載は保江邦夫氏が過去に『バウンダリー』という雑誌にペンネームで連載していた原稿をまとめたものです。ペンネームに関わる部分など、一部改稿致しました。

 

9.謎の飛行物体

やはり無表情のまま勘定を受け取った女将に礼を言いながら店を出た私達が時計を見ると、もう11時近くになっていました。

3人とも極度に疲れていたはずなのですが、不思議に全く眠気は感じていなかったのです。

それよりも、食堂のオヤジが最後に忠告してくれたことが異様に頭にこびり付き、このままモーテルの部屋に戻ってもとても眠れそうにはありません。

 

いっそのこと、これから行ってみるか。

 

誰からとはなしに、そんな雰囲気になった車内には、まだ少しの気分的ゆとりがありました。

「よし、地図で確認した分岐点まであと5~6マイルのはずだ。

そこで左に曲がれば問題の375号線に乗れる。

さあ、いったい何があるのか、ここは我々世界的な物理学者の眼で確かめてみようじゃないか。

UFOでも、水爆でも来てみやがれ」

アラモの村はずれからは、完全な暗闇の中にヘッドライトで照らし出された舗装道路だけが続き、

私はスコットのナビゲーションだけを頼りに、かなりのスピードでタウンカーを走らせていました。

 

そのときです。

後ろの座席で黙って窓の外を見ていたマリアンヌが、左手にどす黒く連なった山並みの上に、小さなオレンジ色の光を見つけたのです。

「あっ、あれを見て。ほら山の上ギリギリの所で動いている光があるわ」

スコットもすぐに見つけたようで、

「見えるぞ。止めてくれ」と叫び声を上げました。

ヘッドライトを消して路肩に止まった車から我先に飛び出た3人が山の上を凝視したとき、

光る物体はジグザグに動き回っていたのですが、

残念ながらヘッドライトに目が慣れていた私の目が闇夜に慣れる頃には、

忽然と姿を消してしまっていたのです。

スコットとマリアンヌは興奮気味に、

「あれがUFOかしら?」

とか、

「いや、戦闘機が何発か断続的にミサイルを発射してもああ見えるかもしれない。

しかし、あの山の向こうに何かあることだけは確実になってきたぞ」

などと言っていたのですが、

私には見えなかったことを知ると、

もう少し粘ってみようと言ってそのまま30分程夜空を監視してくれることになりました。

 

時計の針はもう0時を過ぎ、

砂漠特有の深夜の寒気に身体が冷え切ってしまった私達は、

それ以上山の上を見つめることを断念せざるを得ませんでした。

再び動き出した車の中で、375号線に入るように指示を出しながら、スコットは地図に見入っていたのです。

「ヘイ、マイレージメーターをゼロにしてくれ。

そして、30マイル行った所で車を止めるんだ。

もし、コヨーテサミットに着いてしまったら行き過ぎたと思ってくれ。オーケー?」

私は自分だけがオレンジ色に光りながら山の上を飛んでいた謎の物体を見ることができなかったので、

幾分憮然としながら運転を続けていたのですが、一面真っ暗な砂漠の中を突っ走っていくうちに、

ヘッドライトに照らし出されたごく狭い空間の中に、突然赤い眼をギラつかせてこちらを凝視する異形の生き物を見つけ、思わず急ブレーキを踏んだのです。

 

「えーっ、エイリアン?!」

焼けこげたゴムの煙が立ちこめる中、恐る恐るヘッドライトの明かりの中を凝視した私達は、

キョトンとした顔つきで道から離れていく2羽の野兎を確認して、一斉に安堵の溜息をつきました。

「なーんだ。てっきりエイリアンかと思った」

スコットも私と同じような印象を受けたとみえて、かなりテンションが上がっていたようです。

遥か彼方まで見通せる砂漠の中をうねる道には、確かに食堂のオヤジの言うとおり、全く車の明かりさえないのです。

野兎ならまだしも、こんな所で牛などとぶつかってエンコしたら最後、それこそ助けを求めることもできません。

「おい、気をつけて運転してくれよ。この車がいかれたら、マジにやばいぜ。

この分じゃ、通りがかりの車なんてあてにはできそうもないからな」

頷きながらも、私の頭には最後の忠告が引っかかっていたため、

スコットとマリアンヌに向かってこう言ったのです。

「しかし、こんな状況なら他に車が来たら一安心できるはずなんだが、

さっきのオヤジはなぜ気をつけろと付け加えたんだろう。

こんな『猿の惑星』よりもひどい広野の真っ直中でなら、機関銃を窓から覗かせたギャングのリムジンでさえなければ、

どんな車が来ようとも両手を振って止めて、とにかく互いの無事を祝い、

それぞれの道中の無事を祈ってから別れたくなるのが普通じゃあないか。

それが、いったい何で気をつけなきゃいけないんだ」

当然すぐには答の出せなかった2人は、互いに顔を見合わせながら唸っていました。

「うーん、大した意味もなくそう言ったんだろう。それより、30マイル地点はまだかい?」

 

「いけねっ、さっきの急ブレーキで忘れてた。あ、もう34マイルだ」

慌てた私がゆっくりとブレーキを踏んでUターンしようとしたときには、

もうコヨーテサミットと書かれた標識を通過していました。

とりあえず路肩に車を止めた私が山の方を見やると、頂の連なりがだいぶ低くなっているようです。

先程までの砂漠よりは高いところに位置しているためで、確かにサミットと呼んでもおかしくはないのですが、

わざわざコヨーテと名付けているところを見ると、ひょっとして獰猛なコヨーテが出てくるのでは。

マリアンヌも同じことを思っていました。

「ねえ、何か気味が悪いわね。やっぱり、コヨーテが出るのかしら?」

車の中から空を見上げていたスコットは、コヨーテよりも山の向こう側にある何かの方に興味があるらしく、

マリアンヌの質問には答えないで言ったのです。

「見ろよ、この小高い所からなら、あの山の向こうを飛んでいたオレンジ色の光だってもっとよく見えるかもしれないよ。

折角だから、ここでしばらく山の上の方を監視しておこう。ヘッドライトを消してくれ」

 

私がヘッドライトを消した瞬間から、車の外には不気味な闇が拡がり、

ドアを開けて出たら最後、闇を支配する魔性のものに連れ去られてしまうのではないかとさえ思えました。

スコットも、いざ出てみようというときになって、全く動こうとしない私とマリアンヌの様子に、

「いやー、何となくいやな雰囲気だなー。ここはひとつ、窓から顔を出して見張ることにしよう」

と釈明しながら、助手席の窓ガラスを半分だけ開けたのです。

マリアンヌも私も恐る恐る窓を半開きにし、それぞれ思い思いの方角の空を見つめることになりました。

深夜1時を回った砂漠の高台の冷気は刺すように流れ込み、

私はエンジンをかけっぱなしにして暖をとるようにしていました。

10分程が過ぎた頃、マリアンヌが消え入るような声で話しかけてきました。

「ねえ、何か音がしない?」

 

「え、音って、どんな?」

私が尋ねると、マリアンヌは首を傾げながら運転席の方に身を乗り出してきました。

「何か、車のエンジンが回っているときの音のような・・・・・・」

スコットは、やはり小声で、「それじゃあ、この車のエンジンだろ」と口を挟んだのですが、

マリアンヌは珍しく食い下がっていました。

「いえ、違うわ。この車のエンジン音なら、幾らメカオンチの私にだってわからないわけはないもの。

私がさっき聞いたような気がした音は、あの道の向こうの方から聞こえてきたのよ。

遠くだったから微かにしか聞こえなかっただけで、多分大型のエンジンの音だったから、

この車の音とは区別できたのじゃないかしら」

納得したスコットは、首だけを窓から突き出して耳をそばだてていましたが、

すぐに私の方を振り向いて言いました。

「エンジンを切ってくれ。でないと、俺のできの悪い耳では何も聞こえないぜ」

 

私はキーに手を掛けて、エンジンを切ろうとしたのですが、

ふとそのとき、頭の片隅にいたもうひとりの私が呼びかけてきたのです。

「おい、待て。こんな所でエンジンを切って、もし2度とエンジンがかからなくなったらどうするんだ。

腹を空かしたコヨーテの群れに囲まれようが、岩陰に隠れていた質の悪い連中が金目あてに襲ってこようが、

それこそUFOか何かが不意に現れてこっちに向かってこようが、全くお手上げじゃないか。

お前やスコットだけならともかく、マリアンヌもいるんだから、

責任ある行動をとらなきゃならないのは、わかっているんだろうな!」

私はすぐに手を引っ込め、スコットに告げたのです。

「いや、それは危険だ。

それに、さっきから風も出てきているようだから、風の音だったのかもしれないし。

とにかく、こっちのエンジンを切ってまで確かめるほどのことはないだろう」

 

私の真意をくんだらしく、スコットは頷いて、再び窓の外に注意を向けたのです。

時間が止まったように感じていた私達がマリアンヌの可憐なくしゃみをきっかけに腕時計を見ると、もう1時半になっていました。

「よし、これ以上ここで粘っていてもだめなようだ。

こんな所で風邪を引いてもつまらないし、30マイル地点まで戻ってみよう」

スコットに続いてマリアンヌと私が窓を閉めると、車内の空気は少し弛んできました。

ヘッドライトをつけた私のタウンカーは、大きな弧を描いてUターンし、

コヨーテサミットからもと来た方へ下り始めたのです。

「スコット、あと1マイルで通り過ぎた地点だ」

山の方に向かうダートロードを見つけようと思っていたスコットは、

前方のヘッドライトからこぼれ落ちた僅かな反射光だけをたよりに、

魔性のものが支配しているとしか思えないような不気味な闇を一心に見つめていました。

第6回 「エリア51探検記(3-3)」に続く

 

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